若い教職員のみなさんへ

中央執行副委員長   佐々木俊二

 近年のノーベル賞受賞者の二人の言葉を紹介します。
 一つ目は、2016年に受賞した大隅良典さんの言葉です。
 「『役に立つ』ということばが社会をダメにしていると思います。科学で役に立つということが、数年後に企業化できるということと同義語のように使われている。本当に役に立つのは10年後か100年後かもしれない。少しでも社会がゆとりをもって、基礎科学を見守ってくれるようになってほしいと思っています」と述べています。

 二つ目は、2018年に受賞した本庶佑さんの言葉です。
 「教科書に書いてあることをすぐに信じてはいけません。それを自分で考えて、本当に正しいのかを考えることが必要です。そして、『知りたい』という好奇心を持つことが大切です。」
 日本の学校では、学習指導要領のもと「教科書検定」という制度を経た教科書が教室で使われています。その教科書の記述内容が近年少しずつ変化しはじめています。
 例えば国語は、2023年から高校教科書に「論理国語」が登場し、そこではほとんど文学作品は扱わなくなります。実際に高校入試問題の傾向をみても、論説文の問題が多く出題されるようになっています。数学では、データの分析などの統計学に関する教材が扱われるようになりました。学習指導要領の総則をみると確かに「情報化社会にともなって・・・」という文言が見当たります。社会の変化にともなって、学習内容も変わるのは理解できますが、私は、その順序が逆だと思っています。どんな社会(未来)をつくるのかという大きな目標があって、そのためにどんな教育をするのか(どんな学習内容を教科書で扱うのか)ということを考えるべきだということです。現実の社会にあわせて、「社会にすぐに役に立つこと」を教えるのが教育ならば、学校で職業指導を行えばいいだけのことです。20年先のまだ誰も知らない豊かな社会をつくるための教育を行うべきです。
 中学校に入学したばかりの生徒が「毎日、新しいことを学んで、自分の頭がよくなっていくことが楽しい。」ということを言ったことがありました。それが「学び」の本質なのではないでしょうか。

学校から「楽校」へ

 数学者の遠山啓さんは数学を『数楽』と表しました。学校での「おんがく」は、『音学』ではなく、歌を聴いたり、歌ったりするのが楽しいから「音楽」と書くのだと思います。将来、役に立つから歌うのではありません。そのような意味で、大隅さんの「『役に立つ』という言葉が社会をダメにしている」という言葉を重くうけとめるべきです。逆説的に言えば、すぐに役に立つものほど、すぐに役に立たなくなるのです。
 私たち教員は、もう一度、学びの原点に戻り、私たちが昔、子どもだった頃を思い出し、はじめて何かができた喜びやはじめて何かを知ったうれしさを教室の子ども達に味あわせることができたら、その結果として、すばらしい未来が訪れるのではないでしょうか。私たち大人も子どもたちと一緒に、「楽校」を築くことができたらいいと思います。
 教職員組合活動の中に、教育研究活動というとりくみがあり、日々の教育実践を県内や全国の仲間と交流する機会があります。教科書の内容に必ずしもとらわれない教育実践をあなたもやってみませんか。

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