今年は小学校教科書の採択年

 2023年度は小学校の教科書採択の年で、来年4月からの4カ年使用される教科書を、今年8月までに採択します。教科書を採択する権限は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の規定により、その学校を設置する市町村教委員会に属しています。但し、共同採択の制度が実施されているため、埼玉県内は25の採択区に分けられ、さいたま市・川口市・草加市・上尾市・川越市・所沢市・熊谷市・行田市・久喜市・越谷市の10市以外は近隣の2~9の市町村が共同採択をしています。採択区では同一の教科書を採択することが「教科書無償措置法」で定められており、10市以外は市町村教委の採択権が侵害されることにもなり、制度上の問題となっています。

 2011年の採択で、沖縄県竹富町が八重山採択区の他の市町が採択した育鵬社の教科書(中学公民)の使用を拒んだため、無償化が適用されず、独自予算で東京書籍版を購入することとなりました。今後、市町村の単独採択をすすめ、最終的には各学校で採択できるようにすべきです。

 「教科書採択に関しては、保護者をはじめ国民により開かれたものにしていくことが重要」と文科省も述べており(文科省HP 教科書採択の方法)、学校現場の教員や保護者の意向が尊重された教科書採択が行われることが重要です。私たちの教科書展示会への参加は公務であり、旅行命令に基づく勤務時間中の参加は当然のことですが、そのような対応がなされていない学校があれば組合本部までお知らせ下さい。

 

<教科書無償化について>

 義務教育段階の教科書の無償化を求める運動は戦前から各地ですすめられましたが、日本国憲法に、<義務教育は、これを無償とする〉(26条)と明記されたことから、無償化を求める運動は、戦後、急速に広がりました。

 そのなかで、決定的になったのは、高知市長浜地区の被差別部落を中心に行われた運動です。長浜地区の母親たちは、学校の教師をはじめ、地域の民主団体や部落外の人々にも働きかけ、1961年3月〈長浜・教科書をタダにする会〉を結成しました。高知市議会も、小・中学の教科書を無償にするよう政府に〈意見書〉を提出し、高知市教育委員会も、新学期までには教科書を無償で渡すと約束しました。しかし、新学期に入る直前に、約束がホゴにされ、長浜地区では「教科書を買わない運動」にとりくみ、教師たちは、手刷りの教科書(プリント)を用いた授業を行いました。

 国会でもおおきな問題であるとして取り上げられ、文部省は1963年(昭和38)12月に〈義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法津〉を成立させ、その後5年間かけ小・中学校すべての教科書が無償となりました。高知市立長浜小学校のHPには現在もこの経過が掲載されており、子どもたちはこのことを誇りとしています。

 私たちが現在手にしている様々な権利は、市民団体や労働組合のこれまでの運動の成果であることを忘れてはならないでしょう。

 


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