日教組第72次 第33回埼玉教育研究集会

 10月23日、2022年度日教組第72次、第33回埼玉教育研究集会が嵐山町の独立行政法人国立女性教育会館を会場に開催されました。 新型コロナ感染症に対応して、来賓等の招待は差し控えましたが、午前中には、3年ぶりに記念講演を実施しました。また、午後は7つの会場で分科会を開催し、参加者のレポートをもとに活発な議論が行われました。

 午前中の記念講演は「現代の貧困問題から問い直す学校の役割」をテーマにNPO法人の理事で、反貧困ネットワーク埼玉の代表でもある藤田孝典さん(聖学院大学客員准教授)がおこないました。冒頭、藤田さんは「私がとりくんでいる貧困問題の解決のためには教職員のみなさん理解を得ることはたいへん重要。その点で今日は私にとってもたいへん意義のある機会です」と挨拶しました。

 「コロナ災害を乗り越える命とくらしを守るなんでも電話相談会」などを実施し、貧困問題の解決にとりくんでいる藤田さんは「コロナ禍でますます格差が広がり、貧困問題は深刻になっている」と述べました。特に非正規労働者とりわけ女性労働者が解雇されたり、雇用日数が激減するなどの状況が生まれっています。正規労働者の賃金も上がらないにもかかわらず、正規と非正規、男女の賃金格差はますます大きくなっています。

困っている人が社会を変えるきっかけに

 藤田さんは「貧困は個人の努力では変えられない構造的な問題」「非正規労働者は構造的につくられ、安価な労働力で企業を存続させてきた」「電話相談の80%は女性。性風俗や性売買などに関連した相談が多く、構造的な女性差別が日本社会の根本的な課題になっている」「バブル崩壊後の1990年代の就職氷河期の世代が親の世代になっており、貧困の世代連鎖を招いている」「10代の自殺率は先進国でトップレベルになっている」などとデーターに基づき現状を語る一方、「困っている人々が社会を変えるきっかけになる人」「動けば必ず変わる」と、貧困問題で、厚生労働大臣、埼玉県知事、さいたま市長などにはびたび要請・働きかけを行なってきた、これまでの経験に根ざした明るい展望も語りました。

とりわけ教育の分野では「『給食費』『教材費』『制服代』などを現物支給で無償化するとりくみが求められる」とし、医療費無償化や、公共サービスの無償化(現物支給)がすすんだ1970年代の美濃部都政のような政治を運動の力で取り戻したい」と語りました。

 午後の分科会では現場の教職員以外にも退職者や市民も加わり、活発な討議が行われました。

 教育研究活動は私たちの生命線です。ゆたかな教育の実践にむけ、厳しい状況下ではありますが、活動をより活性化させていきましょう。

 参考資料  

  藤田孝典さんの著書


下流老人
2015朝日選書
貧困世代2016講談社現代新書
続・下流老人2016朝日選書
未来再建2018ちくま新書
コロナ貧困2021毎日新聞

関連記事


ページ上部へ戻る