本の紹介

山田玲司

「 非 属 の 才 能 」

光文社新書 700円+税

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 初版が出て10年もたつが、最近読んで感動し、教育関係者に是非勧めたいと感じた力作だ。著者は、世の「常識」を突く埼玉県在住の漫画家。著者は日本の学校、閉じられた教室という空間で子どもたちが一番学ばされることは、「立ち位置の取り方」であり、学習については、親も教師も「受験に合格するため」という合意がなされているため、「生きることの意味」や「なぜ学ぶのか?」「自分とはいったい何者なのか?」などの本質的な疑問を追求する本来の学問の姿からほど遠くなっていると喝破する。
 そして、教師たちにより「これが正解・常識・普通・あたりまえ」と押し付けられ、同調を強制される。「考えない」「疑問を持たない」が求められ、子どもたちは逆境の耐性のない「先送り人間」になり、大人になり「定置網」に引っかかっていくと述べる。
 「学校嫌い」は才能のサインであるとし、「引きこもりに走るような人間こそ、非属の才能を開花させる可能性がある」と様々な例を出しながら述べる。学校という場で、とらわれた思考にとらわれつつも少しの疑問を保持している教員をはじめ教育関係者の仲間たちよ、一読を。


大田堯・中村桂子

百歳の遺言 いのちから「教育」を考える

藤原書店 本体1500円+税

大田本紹介

 本紙でもなじみ深いさいたま市在住の大田堯先生は、3月22日に満百歳の誕生日を迎えられました。新著は、生命誌研究者の中村桂子さんと教育学者である大田堯さんとの息の合った対談、往復書簡で構成されています。

 お二人は、分子生物学をはじめ生物の根本から人間をとらえ、教育は「人づくり」でなく、「人なる」であることを語ります。「ひとなる」の「なる」は、「生る」「成る」「為る」の文字があり、意味としては、「現象や物事が自然に変化していき、そのものの完成された姿をあらわす」と述べ、「今、一番望むことは、次世代、その次の世代へと続く未来の人々に誰もが生き生きと生きられる社会を渡すこと。そのために、今やるべきことは、もっともっと人間について考えることではないか」と両学者は訴えます。大田先生の百歳を超えても、他の学者とともに真摯に学び続けるお姿に心を打たれます。ご一読を。埼玉教組に連絡くだされば、送料込で1400円でお分けします。


 大田堯自撰集成補巻

書籍紹介1月

 地域の中で教育を問う〈新版〉藤原書店 定価本体2800円+税

 昨年11月4日に埼玉大学で大田先生の集いを開いたことは前号で報告した。その日にこの本(補巻)は発行された。大田先生は、「地域の中で教育を問う」ことを主張し続けている。「子どもは単に親の私物ではなく、ましてや国家の私物ではない。教育は人類の一大事業である」ことを認識した上で、教育を問い直すことを幅広く訴える。一九四九年の地域社会の教育計画やその後の同和教育問題、中津川市の教育文化展、岐阜県教育「正常化」問題、中野区教育委員準公選制、都留文科大学、地域からの教育改革、自然博物館等々、大田先生が生きた歴史と地域の中で、思索と展開された行動の足跡が綴られている。今、我々の危機意識の底流にあるモノ・カネに傾いた経済中心の風潮、その支配下での人間関係の亀裂、生命のつながりの孤独化と格差化の中での教育をもう一度問う。


君たちに伝えたい③

 朝霞、校内暴力の嵐から生まれた僕らの平和学習

                    中條克俊 著 梨の木舎

中條克俊

 私たちの仲間である中條さんの価値ある「実践記録」である。1981年,初任校は「校内暴力」の吹き荒れる中学校でした。新任教員としての彼の初仕事は,天井の張替え作業であったとあります。教職員の懸命の努力にもかかわらず,校内の破壊,授業妨害などは続きますが,問題解決の第一歩はPTAと問題を共有し,保護者と協力して継続した校内クリーン作戦でした。これで解決と記すだけなら,どこにでもある「困難突破の物語」ということになるでしょう。
この本を薦めるのは,「校内暴力」の背景を社会科教員として緻密に分析しているからです。その分析を土台にして,形だけの指導ではなく,生徒の内面も動かす実践を,教員集団として取り組んだところにあるのです。内面の指導といっても「道徳教育」ではありません。それは中條さん(平和おじさん)の得意とする「平和学習」の力なのです。しかも,紙の上での学習ではなく,彼の著書で紹介されたように,朝霞という地域に根差した「平和学習」なのです。
彼の分析と,豊かな発想そして着実な実践に,若い先生方を元気づける「何か」が見つかるはずです。ぜひ一読を進めます。
最後に仲間として一言「荒れた生徒=ツッパリとの,その後のかかわりを,彼らの肉声も含めてもう少し丁寧に追って欲しかった。」(南支部 小池 隆夫)


「中江兆民と財政民主主義」 渡瀬義男著

 日本経済評論社 2100円+税

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 東洋のルソーとも呼ばれる中江兆民が,帝国議会の開会,明治憲法の発布へ向けて,国会議員がいかにあるべきか。また,議員と国民(人民)がどのような関係であるべきかを,世論に喚起し,藩閥政権といかに闘ったかを示してくれる快著です。
著者は,兆民の主張の根幹には「財政民主主義」思想が一貫して流れていたことを,繰り返し指摘しています。
予算編成の権限も含めて,国民の代表である議員が予算の内容,増減を審議し,議決する権利を持つことこそが,主権在民の基本だという主張なのでしょう。当時の状況からラジカルな発言は弾圧の対象となるのですが,兆民の意志は,著者が言うように「壁を破るのは……二十一世紀の世代に託されている」のです。時あたかも来年度予算編成期。国民の,そしてその代表者の議員による,熟議と判断が尊重されてこその「財政民主主義」ということになるのでしょう。憲法問題や自民党「独裁」を考えるうえでも示唆に富んだ著作です。


崩壊するアメリカの公教育 日本への警告

鈴木大裕著

岩波書店 (定価1800円+税)

崩壊するアメリカの教育

 

 国連が採択した「子どもの権利条約」(日本もとっくに批准している)ではあるが、アメリカが国連加盟一九三か国中、唯一批准していない国だということをご存じだろうか?アメリカでは公教育が民営化、市場化され、序列と格差が拡大している。規制緩和の中、利益追求と徹底的な効率化とで、教員は「使い捨て労働者」と化している惨状を筆者は、自身の体験を交えて報告する。「日本ではまだ、新自由主義の本当の恐ろしさが知られていない」と。後半ではシカゴ教員組合の運動、「組合改革から公教育の『公』を取り戻す市民運動」を紹介している。アメリカの現実を「日本への警告」として訴える一九七三年生まれの若い筆者は、現在、高知県土佐町役場学校・行政コーディネーターをしている。


〈原爆の図〉のある美術館

 丸木位里、丸木俊の世界を伝える

 

 〈原爆の図〉のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える

 

岡村幸宣著
岩波ブックレット№964    定価(660円+税)

 

 丸木美術館は、埼玉教組の皆さんは知らない人がいないくらい有名な美術館です。東松山市下唐子にある丸木美術館で毎年開催されるヒロシマ忌には、埼玉教組比企支部の仲間たちも組織的に参加して支えています。著者の岡村さんは、1974年生まれの学芸員。丸木位里、俊夫妻が共同で描いた「原爆の図」がいかに描かれ、それがもたらした衝撃とはどのようなものだったのか。お二人の生い立ちと遍歴、そして美術史的にも再評価が進む「原爆の図」について、多くのカラー写真とともに語りかけます。よくまとまっており、平和教育にも大いに役立ちます。この夏、改めて反核、平和を考えながら、ぜひ手に取ってお読みください。


私にとっての憲法

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岩波書店編集部 編  1,700円+税

 施行から70年.私たちはこの憲法をどれだけ使いこなし,その理念を自らのものにすることができたのか.自身の憲法体験から,憲法を「活かす」ためのヒント,現在の憲法論議への提言まで.さまざまなジャンルの53人がさまざまな視点から憲法を語った,53人の憲法論 。

 

 


 好井裕明著「『今、ここ』から考える社会学」

ちくまプリマー新書(筑摩書房) 820円+税

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 社会的に大人になるために読んでためになる新書です。あくまでも情報発信、情報収集の道具に過ぎないはずのスマホ、ラインが子どものいじめの原因にもなっているのはなぜ?「らしさ」って何?「ちがい」のある他者とどう出会えるか?また、「政治的であること」とはなんだろうか?等々を通じて、「今、ここ」から始まり、他者を考える学、他者を理解することの面白さと難しさを考える学としての社会学について優しいまなざしで語ってくれます。生徒、大学生、そして、彼らに語る機会がまさに仕事であり日常である学校の先生方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
 

敗戦70年誌

 「語り継ごう 戦時・戦後体験」

      埼玉退職教職員協議会編 頒価 500円

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 私たちの先輩である埼玉退教に集う31名の元教員による手記が「敗戦70年誌 語り継ごう 戦時・戦後体験」として、まとめられた。「記憶を風化させないために 戦争とは何か よく読んで よく考えよう」は、冊子の扉の言葉である。
 組合員の皆さん、読者の皆さん、ぜひ、この100ページの冊子を手に取って、お読みいただきたい。先輩諸氏の戦争を憎み、平和の大切さを守る熱い思いが伝わるだろう。
 現場教職員の皆さん、工夫してこれを使って、教材化し、教室の子どもたちとともに、戦争や平和について語り合っていただきたい。「教え子を再び戦場に送らない」と誓ってから70年。とうとう、自衛隊は海外に出動していった。しかし、まだ間に合う、子どもたちや周囲の人々に戦争の愚かさを伝え、仲間とともに平和教育を進めていこうではないか。
 (希望される方は埼玉教組本部にお問い合わせを。お申込みいただければ、送料無料で直ちにお送りします。)

アンパイアとレフリーの違いわかりますか?

ragube_ 昨年南アフリカをやぶり,大きな話題になったラグビー。長年ラグビーマガジンにレフリングについて連載していたライターの李純馹(リスニル)さんが,7月15日集英社新書として『ラグビーをひもとく~反則でも笛を吹かない理由』出版しました。野球に代表されるようにアンパイアはアウトかセーフ,ストライクかボールを判定する審判です。しかしサッカーやラグビーはレフリー。ファールがあってもゲームを止めずに流すことがあります。いわゆるアドバンテージ。小さなファールでいちいちゲームを止めていたのでは,ゲームのだいご味は失われます。レフリーの役割は試合を面白く,選手が気持ちよくプレーできるように選手の争いを仲裁し,ゲームをコントロールするところにあると,筆者は言います。
この本は複雑なラグビーのルールをわかり易く解説することが中心ですが,ラグビーとサッカーの関係や各種スポーツの出自についての説明もあり,競技スポーツにかかわる方にお薦めです。しかし,教育現場へのアナロジーとしても興味深いのです。お分かりいただけますか? 教育現場がアンパイアだらけの現実。笛を吹きすぎる「レフリー」で息がつまりそうなこと。オリンピックの前年に開催されるラグビーワールドカップ日本大会に向けて,私たちもラグビーの名審判のレフリングから学ぶ点が多いのではないでしょうか。
 筆者の李さんは『もう一人の力道山』(小学館)『青き闘球部』(ポット出版)などの著者でもあります。

(お近くの書店で購入しにくいときは南支部小池までご連絡ください。本部でも可)


 

大田堯・寺脇研が戦後教育を語り合う

  =この国の教育はどこへ向かうのか= 学事出版 税込1728円

ご承知の通り、寺脇さんは、元文部省官僚、大田さんは、戦後民主教育の生き字引的存在。若き寺脇さんの頑張りを、寛仁大度な姿勢で対応。矛盾に折り合いをつけあいながら学ぶのが「学習」であると主張します。対話なので、読みやすいものです。大田先生サイン入り1500円でお分けします。残部少。

大田堯・寺脇研が戦後教育を語り合う   =この国の教育はどこへ向かうのか=

大田堯・寺脇研が戦後教育を語り合う
=この国の教育はどこへ向かうのか=

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  1. 2016年 9月 25日
  2. 2017年 8月 06日
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