「道徳の教科化と学習指導要領『改訂』の問題に迫る!」             大森直樹さん(東京学芸大学準教授)

道徳というのは人々が生活と仕事の場において少しずつ自然に身についていくもの
だ。身につける道徳は、いつだって生活と仕事のあり方に依拠したものになる。
教育勅語から10年後、小学校令施行規則により、戦前の道徳教育の枠組みは確立す
るが、今次の答申は、まるでそこに回帰するかのようだ。戦前の道徳の中心は、教育
勅語であり、最重要の道徳的価値とされたのは、教育勅語の徳目のうち、「一旦緩急
あれは……(徴兵の発令をうけたときは必ず喜んでこれに応ずるべきで、決 して逃亡
して戦地に赴くことを避けるようなことがあってはなりません。)」だった。
現在の道徳の教科化に向かわせた力の一つに、産業界の要請がある。中教審答申別
記「期待される人間像」にあるように、政府は子どもの能力を早い段階で判断し、財界
が求める人材を効率的に育成することを目指した。しかし、ラインからこぼれ落ちた子
どの不満の解消や、企業に従順な労働者づくりのために、愛国心を中心に据えた教育を
財界と国は改めて指示した。
安倍政権が道徳教育と愛国心教育を重視しているのは、軍事力を強化する施策との
関連もあるが、格差拡大と能力主義がもたらす人々の不満が体制への批判に発展する
ことに危機感を抱き、体制を維持するイデオロギーの役割を両者に期待しているから
だ。教育現場の事実をふまえて、今を生きるこどもたちのための教育論と教育政策を提
起することが、今日ほど必要とされているときはない。

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